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オープンソースを使おう(7) OSSから著作権法を斬る!?

OSSから著作権を斬る!?

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さてこのシリーズではこれまで「著作権法」に関してじっくりとおさらいをしてきた。
それはOSSライセンスを理解するうえでそのベースとなる最も重要な関係法だと考えたからだ。

まあそうはいっても、皆さんの中には、「法務部がやるからとりあえずいいかな?」とか「ちょっと苦手なのでスルーしてきた」という方も少なからずいるだろう。 そういう人のために今まで5回に分けて論じてきた著作権法をオープンソースという切り口から一気にまとめてみよう。

OSSからみた著作権法

著作権法にも改憲派と護憲派がいること、更には日本の法制(憲法、法律、政令、条例等)にも学説、通説、凡例(=最高裁での判決)との間で論争が続いていること、等は法曹界での話。

我々はあくまで「オープンソースを利用する側から見たら著作権法ってどんだけいけてんのよ?」という実務家の観点からまとめてみたいと思う。

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図 使う側の立場に立った著作権論が重要なのだが

著作権の強さ

著作権は強い権利であることを表現するのに「準物件」とか「物件的」と呼ばれることがある。

これはどういうことかというと、1044条からなるあの巨大な民法は親族・相続関係の条文を除くと「物件」と「債権」で構成されているが、権利の強さでは物件の方が強く、その中でも所有権は「物を支配する権利」の中で最強(完全)とされており時効すら存在しない。 所有権以外の物件や債権の時効の期間はいろいろ特例はあるが、一般的に通常10年(「悪意」(*4)で20年)とよく言われる。

このように強い権利を持つ物件は、契約等で新しい権利関係の追加ができる債権とは異なり、法律で規定されたもの以外に勝手に創設はできないことになっており、(物件法定主義) 民法では10個の物件が定義されている(*1)

また物件の定義にもいろいろな考え方がある。

準物件としての著作権のイメージ

図 準物件としての著作権のイメージ

例えば「物件は有体物が前提なので無体物である著作権は準物件だ」といういわゆる有体物限定説(*2)があるが、これだと目に見えない「電気」や「」そして権利としての「地上権」や「抵当権」が物件であることの説明がつかない。

実際には「排他的な支配が可能である物は全て有体物」というのが通説となっているようだ(これが「管理可能説」)

そうすると民法で定める占有権、質権、抵当権、などと同様の立場で著作権があってもよいような気がするがいかがだろうか? しかも民法で一般的に時効10年(「悪意」の場合20年)と言われている中で著作権は死後50年(国際的デファクトの70年にしようという検討が進められている)と長い。

「準物件」としているのは「新たに創設はできない」という規定のため便宜上そうしているのだろうが、逆に入会権や永小作権が「物件」として定義されているのなら「産業財産権」の規定があってもよいのではないだろうか?

著作権の取得と放棄

既に以前の稿でお話したように、日本は諸事情により1899年という比較的早い段階でベルヌ条約に加盟した時点で英米とは異なる「無方式主義」、すなわち「著作した時点で著作権が成立する」立場をとっている。

米国はずっと特許と同様に権利主張には申請が前提(方式主義)だっがが、1989年にようやくベルヌ条約に加盟し、著作者名、著作年、Copyrightマークの表示のみで著作権が成立することになった。(OSSライセンスの修正BSDライセンスやMITライセンスはこれに準じている)
この点が契約書や商標権や特許権などの他の財産権とは違う点だ。

また少なくとも日本の現行著作権法(1970年成立)では著作人格権は放棄できないことになっている。
よくパブリックドメインソフトウエアやフリーソフトウエアの著作者が「著作権は全て放棄する」と勇ましく宣言しているが、残念ながら放棄できるのは著作財産権だけだ。

従ってこの著作者の言いたいことを正確に表現すると「著作財産権は放棄し、著作人格権は保持はするが行使しない」ということになる。

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図 著作人格権は放棄できない?!

OSSにとっての著作権法

ここでは著作権がプログラム、特にOSSライセンスにとってどれだけ頼りになるか?を整理しておく。

1、目的
先ずは著作権法の目的をみておく(法律の目的は第一条から)

著作権法 第一条(目的)
(~前半略~) 文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。

要は「文化の発展への貢献」が目的となっていることからして文学や芸術、音楽、映画などを対象としている法律だということが分かる。

2、プログラムの保護の程度

つまり、「プログラムは文化だ」と考えて著作権を読む必要がある、というわけだ。 ちょっと笑える話だが、問題は中身がどうなっているかだろう。 それを表の形でわかりやすくまとめているのが公益社団法人著作権情報センター(CRIC)だ(下表を参照(*3))

予想通りというか残念ながらというか、この表の中にはプログラムの「プ」の字も出てこない。 つまり『文化の周辺部にあるプログラムは、その中心部にある文学、美術、映像(映画)等と同様に考えよ、プログラムの性質と齟齬があるところだけ条文を追記する』、というスタンスのようだ。

プログラムが保護の対象として追加されたのは一番最後(1985年、第十条を参照のこと)で、例の日立に端を発したIBMスパイ事件が一段落した後も、係争が続き富士通が争っている中で(1988に和解)米国の圧力もあり急きょ著作権法の中に押し込んだというわけだ。(実はこの時、日本政府は著作権法とは別法を作成しようとしていた)

ここで気を取り直して、OSSライセンス上、最も重要な三大権利である改変権、複製権、頒布権(再頒布権)がどうなっているのか確認しておこう。

①改変権
著作人格権の中の「同一性保持権の特例」という形で規定しているようだ。

②複製権
(美術の著作物等の展示に伴う複製)の第三項(第四十七条の三)を間借りしている。
その主旨は以下の2点。

1. 複製物を利用する場合には、自らの電子計算機において利用することを目的にする場合に限る。
2.前項の複製物が滅失以外の事由により所有権がなくなり著作権者からも別段の意思表示がない限り、複製物を保存してはならない。

③頒布権
プログラムの「頒布権」という言葉はなかったが、ここは読み替えて「公衆送信権」を援用する。但し、著作者の権利しか記載されてないため再頒布権に関する規定は存在しない。 以下に条文を掲載しておく。

第二十三条  著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
2  著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。

3、著作権者の定義

最後に、業務上作成したプログラムの著作権は通常会社に帰属することを確認しておく。

参考までにこれも公益社団法人著作権情報センターCRICからの表を以下に引用しておく。

著作者の定義

著作者 著作物を創作した者をいう。
共同著作物については、共同で創作に寄与した者全員が一つの著作物の著作者となる。
法人著作
(職務著作)
法人著作(職務著作) 次の要件を満たす場合には、法人等が著作者となる。
(1)法人等の発意に基づくもの
(2)法人等の業務に従事する者が職務上作成するもの
(3)法人等が自己の名義で公表するもの
(4)作成時の契約、勤務規則に別段の定めがな

 

4、結論

以上の権利はプログラムを書いた時点で成立(取得)する権利だ。

しかし皆さんにはすでにお伝えしているように日本の著作権法にプログラムが追加されてた時の時代背景を思い出してほしい。

コンピュータというと「メインフレーム」だった1980年前半、IBMスパイ事件もようやく一段落した時代。 私自身はPL-1やフォートラン、そしてマイコン用のアセンブラをガンガン書いていた時代に「プログラムにも著作権が認められる」の新聞の文字に正直驚いたのを覚えている。 たとえ著作権法におっつけで追加されママコ扱いされていても、その考えには新鮮さがあった。

しかしそれから30年以上がたちコンピュータはその存在を意識するかしないかにかかわらず我々の生活に深く静かに浸透するようになっている。 それを支えている重要な手段の一つに全世界で分散開発されているOSSが使われている。

こうなってくると、もはやプログラムが「文化」かどうかなどはむしろどうでもよく、各国ごとに異なる著作権法でOSSの権利を統一的に縛るのには限界が出てくる。

日本の著作権法は「強行規定だ」という識者もいるが、そうなってくると例えばOSSで重要な再頒布権は無効と判断されるかもしれなくなる。

各国ごとに異なる著作権法があり、その法律の強さ(強行規定化任意規定か)まで考慮すると、OSSのライセンス条項に親和性を持った各国の法整備、できればプログラム利用を円滑化させるための各国共通の法整備の検討が待たれるところだ。

【おまけ】
ところで皆さんはブログを書いているだろうか?

その際、各社が提供しているブログサービス(goo、livedoor、アメブロ、はてな等)を利用していたとすると、一度その利用規約を確認してみてはいかがだろうか?

ほとんどのケースで「ブログの内容はサービス提供会社も必要に応じて自由に使用できる」が、「もし貴方が他者への権利侵害等があった場合、当社は一切関知しない」ということが書かれているはずだ。

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図 いまいちかなあ?!

さて、ようやくこれで心置きなくOSSの話に移ることができる(続く)

—————— (以下註釈)

 (*1)民法で定める10個の物件

物件

(*2)有体物限定説

固体・液体・気体など空間の一部を占めて存在する物を有体物とする説。

(*3)著作権の概要(出典:公益社団法人著作権情報センター(CRIC))

著作者人格権

公表権

自分の著作物で、まだ公表されていないものを公表するかしないか、するとすれば、いつ、どのような方法で公表するかを決めることができる権利

氏名表示権

自分の著作物を公表するときに、著作者名を表示するかしないか、するとすれば、実名か変名かを決めることができる権利
同一性保持権

自分の著作物の内容又は題号を自分の意に反して勝手に改変されない権利

著作権(財産権)

複製権 著作物を印刷、写真、複写、録音、録画などの方法によって有形的に再製する権利
上演権・演奏権 著作物を公に上演したり、演奏したりする権利
上映権 著作物を公に上映する権利
公衆送信権・公の伝達権 著作物を自動公衆送信したり、放送したり、有線放送したり、また、それらの公衆送信された著作物を受信装置を使って公に伝達する権利

*自動公衆送信とは、サーバーなどに蓄積された情報を公衆からのアクセスにより自動的に送信することをいい、また、そのサーバーに蓄積された段階を送信可能化という。

口述権 言語の著作物を朗読などの方法により口頭で公に伝える権利
展示権 美術の著作物と未発行の写真著作物の原作品を公に展示する権利
頒布権 映画の著作物の複製物を頒布(販売・貸与など)する権利
譲渡権 映画以外の著作物の原作品又は複製物を公衆へ譲渡する権利
貸与権 映画以外の著作物の複製物を公衆へ貸与する権利
翻訳権・翻案権など 著作物を翻訳、編曲、変形、翻案等する権利(二次的著作物を創作することに及ぶ権利)

二次的著作物の利用権

自分の著作物を原作品とする二次的著作物を利用(上記の各権利に係る行為)することについて、二次的著作物の著作権者が持つものと同じ権利

(*4)悪意と善意

法律用語では、事情を知っていた場合に「悪意」、知らなかった場合に「善意」と呼んている。

 

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