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(法)ソフトウエアライセンス契約 ③

ソフトウエアライセンス契約

前回までの2回の投稿でいまさら聞けない「著作権」と「サブライセンス」の説明をした。

今回はそれらを踏まえサブライセンス付きソフトウエアライセンス契約の書き方、読み方のポイントを押さえておこう。契約44207152_s

サブライセンス付きソフトウエアライセンス契約の書き方、読み方

一般的に一般市民が公序良俗や法律に抵触しない範囲において当事者間で合意した内容を契約書の形で締結する(契約書に合意する)場合、相手方、内容、形式は自由に決めてよいことになっている(前回説明した「契約自由の原則」)

ただソフトウエアの使用許諾に関して両者で改めて契約書を作成し締結するケースというのはそれほど多いとは言えず、以下の2つの例のようにあらかじめ決まっていることが多い。

1、一般的なパッケージソフトの使用許諾契約

ライセンサーがライセンシーであるエンドユーザー個人に対して非独占的に使用する権利を与えるだけなのであらかじめ契約の内容は決められていることがほとんどである。

2、オープンソースのライセンス条項

これらは主にエンドユーザというよりはプログラマーなどである場合が多いため何点か注意するポイントがある。

・著作権表記を求められることが多く、また無保証(バグ修正等、瑕疵担保責任に対して)、無補償(オープンソースを使用したことが原因で発生した損害や特許抵触等に対して)が基本。
・またその性質上複製権、再頒布権、改変権に関しては寛容であるケースが多い。
・有償・無償、保障・補償の程度はディアルライセンス(場合によってはトリプル)である場合もあるので最も適したライセンスを選択すること。
・そしてなんといっても修正、改良したプログラムまで含めて公開する必要があるコピーレフト性がどこまで強いかを確認することだ。

オープンソース43271721_s

少々回り道をしたが、早速本題に入りたい。

サブライセンス付きソフトウエアライセンス契約

サブライセンス付きソフトウエアライセンス契約の骨格(基本構成)を記載する。

しつこいようだがが、基本的に内容は当事者間で自由に設定できるのであくまで一例と考えていただきたい。

〇前文

ここでは誰と誰が契約をするのかを明確にする。
この両者は条文の最後に署名をして本契約を合意したことを明らかにする。

例)
株式会社○○○○(以下,甲という)と株式会社××××(以下,乙という)とは,コンピュータ・プログラムの使用許諾に関し,次の通り契約する。

〇第1条 定義

ここではこの契約の対象となるソフトウエアを特定することが主な目的。

・「本プログラム」の内容(どの様な目的で作成されたものか) アプリかライブラリか、バイナリのみかソースコードも含むのか、どのバージョンまでか、更には、プログラム以外にどの範囲のドキュメントが含まれるか、などを記載する。
・ライセンシーが再使用許諾できる地域を限定する場合には、その「地域」を明確にする。

例)
・ 本契約において,「本プログラム」とは,本契約にしたがって契約される○○○○のコンピュータ・プログラムをいう。
・本契約において,「本ソフト」とは,「本プログラム」と「本プログラム」に関するマニュアル,仕様書などの関連資料をいう。

〇第2条 使用許諾の範囲

次に記載するのはどこまでの使用を許諾するかを著作権法を踏まえて記載する。

サブライセンス付きの契約なので、当然ライセンサーが、ライセンシーに対し、本ソフトウェアを複製したうえで、顧客にサブライセンスする権限の範囲を定めることになる。
例えば

●ライセンサーから単にソフトウェアプログラムのオブジェクトコード(バイナリ)を渡しそれに基づいて複製して販売するのか、あるいはソースコードも渡すのか。

●改変やローカライズや翻訳をした上でライセンシーの製品としてサブライセンス販売することも含めるのか。

●ライセンシーの権利が、「ある地域において独占的」なのか「非独占的」なのか。
通常、独占的に権利を譲渡される場合には地域指定することが一般的。 独占的に譲渡してしまうと他の第三者に権利を提供することができなくなる為。

〇第3条 納入日,動作条件、稼働保障等

甲が乙に本ソフトを提供する期日を定める。
また本プログラムの動作条件、および乙が正常に動作しない場合甲に課せられる義務(動作するまでサポートするなど)、稼働中に発生する諸問題に関する保守サポートなどを記載しておく。
乙は本プログラムが稼働可能になった後、○○日以内に甲に報告する、などを記載する場合もここに記載する。

〇第4条 使用料

ソフトウエアの特定、許諾の範囲、納入期日が明確になった後、最も重要なのが使用料(対価)だろう。
サブライセンス付きの場合、ライセンサーの「儲け」は、ライセンシーが複製した数に応じて算出するのが基本ではあるものの、両者の事情により以下の3つのタイプをベースに合意をしておく。

1、ランニングロイヤルティ
ライセンシーが複製し販売した本数に基づき計算のもと(単価X本数)支払われる。
2、イニシャルペイメント(頭金)
ライセンサーが開発対価の一部を前取りする形で、契約当初にある程度の金額(頭金)が支払われる。
3、一括払い
契約当初に実施許諾料全額を支払い、本数無制限で再使用許諾を認めるという方法。

1または2の場合、ライセンサーがライセンシーの複製本数をどの程度の正確性をもってカウントするかまで決めておくとよいだろう。

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第4条までに契約の基本的な骨格は出来上がったので、これから使用するうえでの諸条件(主に責任や義務)を明確にしていく。

以下、一般論はライセンサー、ライセンシーを使用し、条文には「甲」、「乙」を使用するが、ライセンサー=「甲」、ライセンシー=「乙」と読み替えて頂きたい。

〇第5条 禁止事項

ここではライセンシーにやってほしくないことを記載する。
例えば「乙が以下の行為を行う場合には甲の書面による承諾が必要となる」とか。

・第三者への譲渡や貸与
・競合プログラムの第三者への提供
・リバースエンジニアリング(主にオブジェクトコード提供の場合)。

〇第6条 知的財産権

甲が乙に対する制限のみを与えるなら第5条に含めてもよいが、乙に認める権利がある場合もあり、またソフトウエアにおける知財権(著作権や特許権、商標権、営業秘密)は強い権利なので独立して記載したほうが良いだろう。
合意すべき事項としては

・本ソフトウェアを改変したりローカライズしたりした場合に、当該改変版/ローカライズ版のプログラムや関連書類の著作権を誰に帰属させるかだ。

著作権や発明といった知的財産権は、創作したライセンシーに帰属する(自然権)が、ライセンサーとしては、ライセンシーのこれらの成果物を含めてライセンサーに権利移転しておかないと、ライセンシーの今後のライセンスビジネスのの足かせになる可能性がある。

従って、ライセンシーが契約以前に保有していた特許があった場合などの例外を除き、ライセンサーの提供物をもとに乙(ライセンシー)が創作した知的財産権はすべてライセンサーに帰属する、という条項が一般的と考えるべきだろう。

乙が甲の情報を用いずに「独自開発」したものは乙の所有としたい場合にはそれを合意したうえで明記しておく。

妥協案として特許権は乙が所有するが、無償で甲に使用する権利を与える、なども現実解としてはありうるだろう。

〇第7条 責任事項(情報開示・技術指導)

ここでは乙に対して甲の責任事項をまとめておく。

例)
主に乙が甲が提供したプログラムを使用するために十分な情報を開示し、動作するまでサポートすること。
また稼働中に発見した瑕疵について責任をもって修正すること。あるいはサポート期間を設けてそれ以降は有償サポートになる。

などもありうる。

〇第8条以降・・・

これ以降は免責事項、解約の条件、協議の場の設定(誠意をもって・・・となる)、調停に至った場合の管轄裁判所等、一般的な契約形態と同等である。

あるいは甲・乙間の特殊事情により追加したいもの(例えば輸出制限等)の条文を追加していけばよい。

以上、皆さんのソフトウエアライセンス契約の参考にしていただければ幸甚である。

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