人口問題に対するもう一つの選択肢
これまで述べてきたように、日本という狭い領域で考えると少子化や人口減少社会が不安だという主張がもっともらしく聞こえる。
しかし世界規模で見直すと過去10万年の人類の歴史の中で初めての異常現象である「地球の人口爆発」がおきているのだ。
更に今後プレシジョン・メディシンやクリスパー等の遺伝子治療、常時取得した行動情報データ解析等による予防医学、iPS等の多能性幹細胞と3Dプリンターによる人工臓器等、の生命科学の発展による長寿化が進み、
遂には正常な細胞分裂がヘイフリック限界から解き放たれる時が来るとすると、死なない人間が生まれる可能性を否定することは難しくなってくる。
つまり今後も人口爆発はますます加速し、それほど遠い将来ではない時期に、30億年もの長い生命の歴史の中で「地球の人口耐性」が破られる初めての事態が派生することなどありえないと言い切ることは難しいだろう。
その時の選択肢としてバス・ランスドルプ氏率いるMars-oneやイーロンマスク氏率いるスペースXのチャレンジが「もう一つの解」になるのかもしれない。
それはすなわち第二の地球としての火星への移住だ。
突拍子もないような発想、SFじゃないんだから、と思われるかもしれないが、2016年の10月に木星探査機ジュノーによる驚くべき情報を見た科学者がこれまでの教科書を「すべて書き換える必要がある」とまで言わせた。
また既に巨大ガス惑星でJクラスといわれる木星や土星の衛星エウロパやエンケラドスの中心部には豊富な水が存在することが分かっており、地球外生命の存在が期待されている。
それよりも地理的にも組成的にも地球に近いKクラスと言われる火星(地球はMクラス)は一般的にコロニーやテラフォーミングで適応可能性が高いといわれている。
実際、彼らは火星移住に関して真剣に取り組んでおり、移住する最初の船に乗る候補者も選考済みらしい。
実際には無重力状態が人間に与える悪影響(*1)、とか長期間の居住環境をどのように整えるか、地球が破壊されても自給自足の環境が実現できるのか、など解決すべき様々な課題があり、実現したとしても少なくとも数十年以上先の話になるかもしれない。
しかしもしそれまで地球が耐えられ、しかも人類が居住する環境として限界が近いとすると、これらの取り組みは、有力な選択肢の一つになるのではないだろうか?
地球という生命を育むには奇跡的ともいえる良好な環境の中でこれまで20億年以上かかって良くも悪くも進化(地球を破壊するのだから「環境適応」とは言えない)した結果生まれた人類という生命体が地球が破壊されても更に生き残りたいと望むとするともはやこの選択肢しかないといってもいいだろう。。
実際に効果を上げるのは我々の孫の代以降の話になるだろうが、個人的にはその成功を心から祈っている。
・・・、この話を続けると別の話題になりそうなのでこの辺でやめておこう。
以下に以前火星移住の取り組みに関して講演で使用した資料を参考までに添付しておく。
●Mars-one
(*1)宇宙では地上の10倍老化が進む。
先日宇宙飛行士の山崎直子さんの講演があり、地上に住む我々一般人には体験できない話を色々聞かせてもらった。 NHKでも放映されたが無重力空間にいると老化が10倍早く進むらしい。特に筋力、骨密度、循環機能、代謝機能(脂質・糖分)、免疫力等が低下するらしい。
火星に行くのに半年かかるとするとそれだけで寿命が5年程度短くなる計算だ。
NASAの調査によるとその原因は運動不足ではなく(宇宙ステーションでは飛行士は一日2~3時間程度の筋トレをしている)平衡感覚を全身に伝える器官である「耳石」が浮いてしまうことらしい。
従って、スキューバダイビングの時のようにおもりなどをスーツにつけて体重を3倍にしても(火星の重力は地球の三分の一)足にかかる負荷は同程度になるが、耳石の位置を地球と同程度にしておくことはできない。
(続く)
2016年11月22日