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人口動態予測も異次元の世界へ
これまでのおさらい
前稿で生命科学の進歩により人間が探し求めた「不老長寿」が現実のものとなり「死なない人間」が生まれるかもしれない」というややSF的な話から、実際に政府が公表している人口推移の予測とは異なる学説を唱える複数の学者の提案を紹介した。
「人口動態予測はかなり正確に当たる」というのがこれまでの常識ではあったものの、それを利用して下図を見せてあおっている講演者やメディアの解説をこの数年よく聞いてきた。
次に人口が少ない国の国民は不幸なのかの検証も行い、少なくともG7先進七か国の米国を除く多くの国は人口が6000万人~8000万人だが、一人当たりのGDP、生産性、ノーベル賞受賞者数、オリンピックメダル獲得数等では日本を上回っていることも確認した。
一方、世界的には人口爆発による「地球の人口耐性問題」が起きていることも国連の人口基金HPより引用した以下の図等を使ってお伝えした。
つまり世界的にみると経済や治安が安定しており、寿命が長い日本のような先進国は国民の幸福度を上げる努力をするとともに人口減少を推進すべきではないだろうか?という話までしてきた。
どこに軸足を置けばよいのだろうか?
まず第一に、これまでの人口動態予測が正確だったのは、人間の生死が自然な形で行われてきた、という前提があったからだ。
第二に、今後は長寿を願う人間の欲望を満たすため科学技術が更に積極利用される点だ。
特にコンピュータはウェアラブルからインプラントへ浸透し、テロメアの制御をはじめ万能細胞の実用化、3Dプリンタで作成する人工臓器などを含めた生命科学の進化、高精度ロボットやナノボットの進化によるサイボーグ化、さらに今後さらに進展するであろう「すべてが繋がっている」メッシュ型社会の到来により蓄積されたビックデータ・・・
それらは今後のITプラットフォームの主役となるであろうAI(人工知能)の活躍する場が飛躍的に広がり、人類にとって革命的なの進化が起きるかもしれない。
人間の寿命、特に「健康寿命」が格段の延びていき、やがて「死なない人間」が現実のものになることを全く否定することは難しくなってきた。
つまり人間は自然な形で「死」を迎えることを望まなければ永久に生きられるようになった場合、今までの人口動態予測の根拠は根底から覆る。
私が専門のIT技術の進化から将来実現しそうな「不老長寿」を思いつくまま何点かあげてみる。
コンピュータ史から見た長寿化の事例
1、ウエアラブルの進化
・生活反応の常時監視による早期治療
・ライフデータ(人間の食事・運動・睡眠などあらゆる行動パターンや生活反応)から健康長寿へのアドバイスや予防治療へフィードバック
2、インプラントの進化(3Dプリンター)
・自己細胞をつかった人工臓器
・人工の血液、筋肉、神経等の積極利用
・擦過傷等の治療時に筋肉や皮膚細胞の直接噴霧。
3、サイボーグ
・義肢の高度化
・脳の記憶データの抽出、蓄積、抽入
・神経信号の人工伝達
4、ナノボット
・消化管や血管中での検査、治療
・個人に適合した抗体の強化(がん細胞への攻撃など)
5、遺伝子治療
・遺伝子治療(病気の予測に応じた予防など)
・老化しない細胞(テロメラーゼのような永遠に分裂する細胞)
・遺伝子の選別、書き換え
これらの取り組みを支えるのが、今後の産業のプラットフォームとなるであろうAIだ。
老化に関する研究機関としては、これまで1999年に米国で設立された老化研究所(Buck Institute)やなどをはじめ、各国で老化に関する研究はされてきたがここにきてGoogle等のITジャイアント企業でも積極的な研究投資がはじまっている。
例えば、2013年9月に数百億円を投じて設立されたCalicoだ。 これはAlphabetの“Moonshot”プロジェクトGoogle Xの中で老化に関する研究をしており、当面の目標は人間の寿命はあと100歳延ばすことを目標にしているそうだ。
Googleの創始者セルゲイブリン氏やラリーペイジ氏は早々と寿命500歳宣言をしている。
【参考】私が講演などで使用しているスライドを2枚紹介しておく。詳細は講演にて。
(続く)
2016年11月3日