目次
イノベーションが身近になってきたぞ
これまでコンピュータ史からイノベーションを予測する手法の一例を示してきた。ご存知のようにイノベーションは「新結合」「新基軸」と言われるように必ずしも科学技術やインベンション(発明)を伴うものではない。 しかしこの数十年のイノベーションの進化にはICT(ソフトウエアも含めた情報通信技術)が関係しているものが突出して多い。 特に製造、運輸、金融、農業、教育、宇宙、防衛(サイバーを含む)、エネルギー、医療/健康寿命、介護、脳科学の分野等がICTと強いつながりを持って発展しているのは皆さんも実感していることだろう。 そしてその中核に位置するのがコンピュータで、これなくしてはICTは語れない。 このような状況の中でイノベーションを予測するためには「コンピュータの使われ方(ユースウエア)」に焦点を当てることが重要であり、今はその第5遷移、半世紀前にジョン・マッカーシー教授が予言した「ユーティリティコンピューティング」の時代となっていることは既に説明したとおりである。 そしてこの時代は従来よりは容易に誰でもがプチ・イノベーション(プチ・イノベ)が起こせる時代でもある。 そう、貴方も明日からイノベーターになれるのだ。
そこで今回はICT(コンピュータ)を利用したソリューション史から今後どのようなソリューションを行っていけばイノベーションが起こしやすいかを皆さんとともに考えていくことにする。
第1期:メインフレーム(1960年代~)
メインフレームの歴史の出発点は弾道計算用に17500本の真空管を使って1946年に開発されたENIACだろう。 そして商用のものとしては集積回路で構成した1964年のIBMのシステム/360だ。 その後国産のメインフレームが続々と発売されていくことになる。そしてIBMが1970年に満を持して発表したのがLSIを使用したシステム/370だ。 私が大学時代に使用したのもこのシリーズである。
1980年に就職すると待っていたのが富士通のFACOM M-380だった。 このマシンは開発棟から少し離れたビルの1フロアーを占有。使うためには自転車を利用する人までいた。 パンチャーとか紙テープという言葉を知る人はいるものの実際に使った方は今は少数派。 しかし当時我々は科学技術系のシミュレーションや電子機器のクロス開発などで大変お世話になったのも事実である。 メインフレームのビジネスは1980年代から90年代がピークだった。
因みに1970年代にコンピュータの大様だったシステム/370の計算スピードをDhrystone MIPS(※1)という指標で比較すると、今のiPhone5(ARM Cortex A15)はその約3万倍だ。私たちは45年前にワンフロアーを占めていたメインフレームを一人3万台づつ持つている計算になる。
(※1) Dhrystone MIPS :(当時はVAX11/780の性能を1DMIPSとして比較した)
Dhrystoneは1984年にReinhold P. Weicker が開発した合成ベンチマークプログラムであるり、システム(整数)プログラミングの性能に注目したもの。 この測定結果は DMIPS(Dhrystone million instructions per second)値、すなわちDhrystone数を 1757 で割ることで得られる(1757 はVAX11/780) の Dhrystone 数。同じMIPS値でも機種により実際に行える処理の量は異なるため、当時のベストセラー機VAX 11/780の性能を基準としたもの。この定義から同機は1MIPSとなる(なお、同機が1MIPSだったわけではない)
(wikipediaを参考に記述, 右図はold-computers.comから引用)
【第1期のソリューション:単一企業によるワンストップサービス】
特徴は、「シングルベンダーによるワンストップサービス」で、開発した会社からメインフレームのお守りをするための「システム専門家」として専用部屋が用意された。 つまり中身から運用までわかる人がユーザー企業にはだれ一人いなかった時代だ。
第2期:UNIX分散システム(1980年~
その後、メインフレームの技術をベースにVLSI(超LSI)の利用が進展する中で小型化が進みPDP-11やVAX等のミニコンが台頭していく。 そしてUNIX/OSによるネットワークをベースにした分散型のコンピュータシステム時代に入る。 ユーザー起業は高性能・低価格化、使い勝手の良さからこれらのシステムが支持され(選好され)ダウンサイジングが加速していった。
【第2期のソリューション:SIerによるワンストップサービス】
入出力装置、記憶装置、ネットワーク装置などが様々なベンダーから提供されるようになったためユーザ企業はそれらをまとめて動作保証し、使い勝手の良さを提供してくれるマルチベンダー環境のインテグレーションを求めた。 これによりシステムインテグレーションやカスタマイズをSIerと呼ばれる業態が確立していく。
(次頁に続く)
2016年3月11日